☆☆ 腐った足と救急車 ☆☆

ある晩、愛と祈りのパトロールの途中で、動けないおじさんを発見。
昨夏彼を介抱した時は、足におびただしい数の蛆虫がたかっていたそうです。
本人は自分自身の足を見る気力もなく、お酒に溺れてしまっていました。

土色をしたとても人間の皮膚とは思えないような彼の足と、
今にも死に絶えそうな彼の姿を見て、救急車を呼びました。
数分後、静かに救急車が到着しました。
(寿町は危険なので、救急車も音を鳴らさないようにしてるのです。)
が、彼は飲んだくれで、病院もすぐ抜け出してしまう
もちろん住所不定で身寄りもないブラックリストの人間。
救急隊員は彼を見て、困った顔をしました。

救急隊員にとっては、病人を病院へ運ぶのが仕事。
でも、お酒を飲んでいる人はあるイミ自業自得。お断りなのです。
それに彼の場合、たとえ連れていってもブラックリストのホームレス。
なかなか病院も引き受けてくれません。
更に、ケースワーカーとの手続きがなければ入院はできず
かといって、彼を寿町の道端へ戻すのは 救急隊員の仕事ではないのです。

佐藤師が身元引受人となってくれたため、やっと彼は運ばれていきました。
運よくその日は、彼を看てくれる病院も見つかりました。
(それでも一時間もしないうちに追い出されましたが。)

骨は大丈夫だけど、もう肉は腐ってしまっていたそうです

側にいた間ずっと「悪いねぇ、悪いねぇ。」と言っていた彼。
でもみんなに心配されて、ちょっぴり嬉しそうにほほえんでいました。
困った飲んだくれで救急車もなかなか乗せてもらえず、足も腐ってしまっていますが
それでもちゃんと 魂は生きているのです。

 

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