***** 自分たちで乗り越えていく力を (2006年12月) *****
 

皆様、明けましておめでとうございます
どのようなクリスマス、また新しい年をお迎えでしたでしょうか。
エチオピアは1月7日に少し遅いクリスマスを迎えましたが、ソマリアでの戦闘においては激動で、心揺り動かされる年末年始となりました。
 

■ 今月の活動と報告 ■

1.養育者へのアプローチと地域の支え

 プロジェクト終了後も孤児が学校で教育を受け、将来への備えをしていくためには、孤児の養育者たちが必要な収入を確保する必要があります。そこで、孤児擁護委員会のメンバーと協力して、養育者73人に収入向上指導・支援と金銭管理指導の対策をとりました。
ただし、養育者がおらず、子どもだけの家族の家長でありつつ在学中の孤児7人については、もっと時間をかけて相談し、個別の対応を進めようということになりました。今年4月末まで、ジジガに残るスタッフ2名がこの7人に関わり、またその期間にあわせて他の孤児・養育者・地域の人々へもフォロアップを行なってから、FHIのプロジェクトを実質的に終了させることになりました。
 指導をしたからと言ってそれが身についたとはまだ言えません。実際に生活し、困難に直面した時に、「私(たち)はこれをどうやって解決すればよいのだろう?」と悩み考え、それを乗り越えて徐々に自分の力にしていくものでしょう。
その困難の際に程よく助けられる環境が短期的にあるというのは素晴らしいことです。ジジガの人たちが今後自分たちの地域の問題をしっかり受け止め自分たちで乗り越えていく力を身につけるため、意義あるフォロアップの4ヶ月となるように、心から期待し願っています。
 


支援してきた孤児ハブタムとご近所の養育者

彼は両親を亡くし、三人の兄姉たちと暮らしていましたが、一番上のお兄さんが学校寮に入り、他の兄・姉が家出をしたため、ご近所の方に引き取られてきました。今後お兄さんが戻ってきてインジェラ原料の中売りをしながら生計を立て、一緒に暮らす予定です。孤児にとってこのように養育環境が頻繁に変わることはまれではありません。
 

2.ソマリア情勢とジジガの治安

 エチオピア政府軍の加担するソマリア暫定政府と原理主義集団・イスラム法廷は、12月20日よりソマリア国内の南〜中央部にて戦闘体制に入りました。
 1月1日、ソマリア暫定政府+エチオピア政府軍が中央〜南部ソマリアを制圧し、イスラム法廷のリーダーは南部ケニア国境側へ敗走。2日、ソマリア暫定政府は「武装勢力の時代は終わった」と宣言し、順調に行けば住民は武装解除し、エチオピア政府も撤退して、数百人の犠牲者を出した悲惨なこの戦闘もなんとか解決へ向かえそうな兆しでした。
 しかし8日から10日にかけて、アメリカ軍が大型爆撃機にてソマリア南部・ケニア国境近くを空爆し、一般住民の死者を出した模様です。米国防総省によると、目的は潜伏した国際テロ組織アルカイダ活動家殺害とのこと。ソマリア暫定政府は米国の空爆に支持を表明しましたが、アルカイダ活動家の潜伏や(アメリカが以前より主張してきた)ソマリアとアルカイダの関係という情報の確実性は定かではありません。
 これまでもエチオピア政府軍の過度な軍事介入と武力行使のゆえに、ソマリア国民の反感が強く、またエチオピアの背後にはアメリカがついているとも囁かれてきました。実際エチオピア政府の軍事介入は多くのエチオピア国民にとっても悲しみなのですが、この米軍空爆によりソマリア国民の対米感と合わせて対エチオピア感が強くなることが懸念されています。
 感謝なことに、今のところジジガではデモ行進があった他はこの戦闘に関わる暴動や爆破事件は起こっておりませんが、ジジガの平和と安全の守りのため、そしてソマリアにおける戦闘・混乱が一日も早く平和的解決を迎えられるよう、続けて覚えて下されば感謝です。
 

3.アジスアベバの新プロジェクト

 1月からは当面、主にアジスアベバで始まる新プロジェクトに携わることになりました。アジスアベバにおける貧困の問題は切実で、売買春も多く、結果としてエイズも蔓延しています。2001年のデータではアジスアベバのHIV陽性率は15.6%。ジジガの19%ほどではないにしても大変高い感染度です。しかし、ジジガとはまた異なる状況であることも感じます。
 アジスアベバでは既に多くのNGOが活動しており、多くはエイズプログラムと子ども支援に従事しています。興味深いことに貧しい家庭でも親は比較的しっかり子どもを学校に送り出しており、人々はエイズに関する知識ももっている様子でした。また、人々の主な宗教はエチオピア正教というエチオピア独自の色を持つキリスト教です。
 そこでFHIとしては、聖書の価値観に基づき、収入向上プログラムを中心に親(特に母親)にアプローチして、家族ぐるみでの全人格的回復と自立のための支援をできないか、と考えたのです。
 親が適切な自己像をもって、収入向上を進めて生活の必要を満たしていけるようになれば、自らの全人格的回復はもちろん、子供たちも食事・教育・学用品など必要を親に満たされ、自らと将来への健全な希望を育み得ます。また、エイズの問題の背後には貧困があり、いくら知識で感染予防法を知っていても、その予防によって収入が生活最低分を満たさないなら、今を生きることが優先されることでしょう。しかし、アジスアベバには裕福層も多くいて金銭がよく循環しているので、的確な職を身につければ、望まない売春を避け、結果としてエイズの対策ともなり得ます。
 このような複雑に入り組んだ諸問題になんとかして適切な形で関わりたい、という想いをもって、アジスアベバの中でも特にNGOが少なく必要が多い地域を選び、既にエイズ予防啓発活動と孤児支援を進めている現地NGOと協力して、更なる計画を進めていくことになりました。実際、どのように展開していくのかわかりませんが、問題を分析して働きの妥当性を検討する貴重な機会であり、現地のNGOの働きから学ぶ機会でもあり、とても感謝です。
 ジジガとはだいぶ形態の異なるプロジェクトですが、期待しつつ、この働きをもってエチオピアの人々に仕えていきたいと想います。
 

 ■ 覚えて欲しいこと(お祈りの課題) ■

● ジジガの平和と安全が引き続き守られ、今後ジジガの孤児・養育者・地域の人たちが皆希望をもってエイズにまつわる諸問題に取り組んでいけますように
● ソマリアにおける戦闘・混乱が一日も早く平和的解決を迎えられますように。ソマリアとエチオピア、イスラム教徒とキリスト教徒の関係回復のため
● アジスアベバの新プロジェクトが、神とエチオピアの人々に最もよく仕えられるものへと導かれますように
● 高橋ゆかりスタッフと私、および日本にいる家族の健康が、霊肉共に支えられますように
 
 

 ソマリアの戦闘と混乱の展開、ジジガの今後、新たな働き、何もかもが新しく先がわからないことだらけですが、そのことで不安や恐れで心を満たすことなく、しっかり希望と平安をにぎりしめて一歩一歩目の前の道をしっかり歩んで行きたいと思う新年です。
 
 皆様にとっても、新たな希望と平安に満たされて歩みだせる祝福の年となりますように。

トニーの助けも… (2007年1月)

** 平安をあなたに **

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